水の衛星に愛を込めて
土星の衛星には生命があるっぽい衛星が多い。
特に昔から言われていた衛星、タイタンはメタンの大気を持っている
ことが知られている。
メタンは紫外線によって分解されるため、何らかの理由で供給が続かない
限り、蓄積されることはないはずなので、地質活動もしくは生命活動が
原因でメタンが蓄積しているのではないかと言われている。
2004年のクリスマスイブに、土星探査機「カッシーニ」から投下された
小型探査機「ホイヘンス」が観測したデータによると、タイタンの
地表はにメタンの海や川、海岸などが存在することがわかった。
また、どうやらメタンの雨も降っているようで、川や雨により石が
削られて丸くなった小石が存在することなども確認されている。
地球以外の星で生命がいる可能性があるとしたら、まずはタイタンでは
ないかといわれてきたのだが、近年になって新たな候補が出現した。
土星の衛星、エンケラドゥスである。
エンケラドゥスはこれまで地質学的に死んだ星、ただの凍った衛星だと
考えられてきた。タイタンと違って大気が存在するわけでもなく、
氷に覆われていたのであればそう考えられても仕方はない。
当然のことながらスペースオペラのネタにもならなかった。
一方タイタンはネタにされ続けた。
しかし、近年のカッシーニの観測から、地質活動が原因と思われる
ひび割れが確認され、そのひび割れから氷や水の噴出が起こっている
ことも明らかになった。
このことが示唆することは、エンケラドゥスの地下に液体の水が
存在するということである。
生命の存在に必要なもの、それは有機物と水である。
液体の水が存在なんて話になれば、生命の存在する確率は飛躍的に
跳ね上がるわけで、天文学者が注目するのも無理はない。
にしてもこのサイズの小天体で、46億年もたった現在でもなお
地質活動が続いているってのは結構異常なことである。
地質活動の主な原因としては土星の潮汐力が挙げられる。
エンケラドゥスは土星を33時間という非常に早い周期で周回しており、
土星と近づいたり遠ざかったりを繰り返しているわけだが、
その度に土星の重力の影響を受け、地面がものすごい力で引っ張られる。
その結果、衛星の物質が加熱され火山活動などを引き起こす、と
考えられる。
同じような潮汐力の影響による火山活動で有名な衛星が存在する。
木星のイオである。イオでは地球以上に活発な火山活動が起こっている。
イオも星としてのサイズは非常に小さいので、本来であれば火山活動は
起こらないはずなのだが、潮汐力の影響は木星の重力をもってすると
半端ないものなのだなぁと。
潮汐力の影響は地球では潮の満ち引きが目に見えて明らかなものだが、
実際には火山活動などにも影響を与えている、はずである。
イオやエンケラドゥスではそれが火山の噴火や地質活動にも影響を
与えている。
地球ですら潮汐力によって生命の進化に大きな影響があったと
考えられている。
エンケラドゥスにおいては潮汐力が生命の根幹を支えている…
かもしれない。もし生命がいたら、の話ですが。
少なくともこれからスペースオペラのネタにはなりそうですわ、エンケラドゥス。